自民党だろうと民主党だろうと、政権末期の醜態は無残だ。菅官邸では、早くも罵り合い、足の引っ張り合い、責任のなすり合いを始めた。 官邸筋が明かす。
「菅側近が福山哲郎・官房副長官を同行させることに難色を示し、官邸を二分する議論が繰り広げられていたのです」
福山氏は、仙谷由人・官房長官が会長を務める凌雲会(前原グループ)に所属。外交経験がゼロに等しい菅首相をサポートするために、仙谷氏が外務副大臣から外交担当副長官に横滑りさせ、福山氏は去る9月にニューヨークで開かれた国連総会に同行した。
そんな福山氏のASEM(アジア欧州会議)行きがなぜ物議を醸したのか。前出の官邸筋が続ける。
「仙谷長官が総理の訪米中に独断で尖閣漁船問題を決めた挙げ句、那覇地検に責任を押しつけて批判を浴びた。それでも仙谷長官が“菅に外交は無理。オレがやる”という姿勢を示していることに菅側近たちが不満を募らせた。
そのため、“福山を同行させると、外交が仙谷のいいなりになる。総理の手足を縛るだけだ”という声が上がったのです」
福山事務所は本誌取材に「実際にASEMに福山は同行しており、同行しないようにとの打診もなかった」と答える。
代表選前後から、菅首相は政権基盤安定のために小沢派との融和を模索し、一時は仙谷氏の更迭も考えた。一方、仙谷氏は菅続投を決めると、凌雲会と社会党出身者で内閣と党の主要ポストを占め、これに菅氏周辺から“仙谷さんに官邸を乗っ取られた”との不満が噴出した。この亀裂がさらに深まっている。
内ゲバはこの政権の習い性としか思えないが、日中問題という国難さえも争いの材料にしようという“野党体質”は、もはや直りそうにない。
※週刊ポスト2010年10月22日号