おぐにあやこ氏は1966年大阪生まれの元毎日新聞記者。夫の転勤を機に退社し、2007年夏より夫、小学生の息子と共にワシントンDC郊外に在住。著書に『ベイビーパッカーでいこう!』『魂の声 リストカットの少女たち』などがある。おぐに氏がアメリカにおける日本人像のひとつを綴る。
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2007年に欧米で有名になった「日本人女性」が、円高と日本政府の為替介入のお陰で、また注目を集めてる。彼女の名前は、「ミセス・ワタナベ」。誰だよ、それ? って感じなんだけど、コレ、実在する女性の名前じゃない。為替投資する日本人主婦の総称なのだ。
午前中には円高方向だった相場が、お昼をはさんで午後になるとなぜか円安に戻る、というフシギな現象が、2007年ごろ話題になったそうな。よくよく調べてみたら、主に日本の主婦やサラリーマンが、お昼休みに円売りドル買いして、世界の相場を動かしていたことが判明。世界中のトレーダーたちは、FX取引をする日本人主婦たちを「ミセス・ワタナベ」とか「キモノ・トレーダー」とか呼んで、その主婦パワーの結集を恐れたんだって。
中には元手の100万円を2500万円まで増やした「ミセス・ワタナベ」もいるそうだ。ああ、なんと、うらやましい話。
でも、どうして「渡辺」なの? 鈴木とか、田中とか、山田とか、そっちのほうが日本っぽいのにね。あれこれ調べてみると、こんな説が……。当時の財務省の渡辺博史財務官と引っ掛けて、「今や為替を動かしてるのは、ミスター・ワタナベではなく、ミセス・ワタナベなのだっ!」という調子で広まった名前ではないか、と。
なーるほど。
※週刊ポスト2010年10月22日号