菅政権は官僚のいいなりだと見られている。そして左派政権として誕生したにもかかわらず、財界の要望を唯々諾々と受け入れる。これは矛盾なのだろうか。
「そうではない。官僚も財界も、そして労働組合も、一言でいえば『既得権集団』だ。その利害調整で権力を独占してきたのが自民党だった。民主党は『官から民へ』と掲げてそこに風穴を空けようと訴えて政権を奪ったものの、既得権集団の抵抗で鳩山政権が倒れ、それを見ていた菅首相や仙谷由人・官房長官らは完全に戦意を喪失して、屈服する道を選んだ」
自民党出身で、今は民主党内で非主流派に追いやられているベテラン議員の弁である。その通りかもしれないが、彼らもまたその政権に異を唱える力もなく付き従っているのだから、同じ責めを受けるべきだ。
そして、既得権集団の代表格が大新聞やテレビである。彼らは記者クラブという“情報独占ギルド”を長く守って、その利権によって発展してきた。菅政権は、ことのほか大メディアに気を使い、その利権拡大には余念がない。
いまだに国民の反発が強いテレビ放送の地デジ化もそのひとつだ。電波の有効利用だといいながら、新体制になってもテレビ局による“電波ジャック”の現状はほとんど変わらず、国民にメリットは少ない。それどころか、チューナー、テレビ、アンテナなどに多額の出費を強いられることから、特に低所得層や高齢者世帯などに影響が大きい。そのさなかに、政府は「家電エコポイントの半減」を平気で打ち出した。この政権がどこを向いているか、非常によくわかる。
そういえば、エコカー補助金も早々に打ち切った一方で、「エコカー」として国民に大量に買わせた軽自動車の自動車税を2012年から4倍にする法案を用意している。同じ性根から出た悪政だろう。
※週刊ポスト2010年10月29日号