領土、資源、食糧、企業……急成長を続ける中国の・触手は世界のあらゆる分野に及んでいる。とくに最近、問題になっているのが、中国の「希少動物」漁りだ。珍味として、そして、漢方薬の原料として、絶滅寸前の動物が密輸され大量に消費されている。ジャーナリストの富坂聰氏が、中国の「闇市場」をレポートする。
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中国人が珍しい食材に目がないのは有名な話だが、その中心地が広東省だ。かつて90年代に訪れた広州清平市場には、孔雀やセンザンコウなど珍しい動物が当たり前のように並べられていた。日本ではペットとして愛される猫が、逃げないよう手足の先を切り落とされ、弁当箱ほどの大きさの檻に押し込められてうず高く積まれる光景に言葉を失ったこともある。当時の広州市内には、人間の胎盤を使ったスープを出すレストランが病院の裏にあるような世界だった。
そんな広東人の趣向は、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)騒ぎの際、感染源としてハクビシンが有力視されると一時的に下火となったが、3、4年を経て再び勢いを取り戻した。
中国語で「野味」と言う。同じ鴨でも家畜と野生では値段が違い、中国では圧倒的に野生が珍重される。経済発展がさらにこの傾向に拍車をかけ、いまでは地下で大きなマーケットを形成するまでになったという。
「ここ数年の『野味ブーム』は主に二分されます。一つは飢えていた過去を思い出すノスタルジックな嗜好、そしてもう一つが、規格外の金持ちによる道楽としての野味です」(地元紙記者)
前者は主に、かつて自分たちが捕らえて食べたスズメや鵜、野鴨、サギ、カメ、蛇などが対象となる。問題は言うまでもなく後者だ。
広東省で手広く企業を経営する元官僚が語る。「フカヒレや伊勢エビ、ナマコ、ツバメの巣、そして日本から密輸されてくる神戸牛や松阪牛といった食材に飽きてしまった官僚たちの接待、とくに“ここぞ”という場面で出すのが野味なんです。だから、こんな珍しいモノがテーブルに並んだのかという驚きが求められる。希少動物は恰好のターゲットです」
※週刊ポスト2010年10月29日号