政府がいくら景気回復を喧伝しても、消費は急速に冷え込んでいる。もろに打撃を受けているのが外食産業だ。東京・新橋の格安居酒屋の店長が語る。
「客足がいいのは飲み放題キャンペーンの日だけです。隣の店は客が多いと思ったら、やっぱり飲み放題の日でした」立ち呑み屋でさえ閑古鳥が鳴いている。大手ビール会社営業マンはお手上げの表情だ。
「記録的な猛暑だった8月のビール出荷量が前年比マイナスだったのはショックです。消費者はスタンドバーさえ立ち寄らずに自宅で第3のビールを飲む。だから飲食店の客足が減り、量も出ない」
国税庁の民間給与実態統計調査では、民間サラリーマンの昨年の平均給与は約406万円で、前年比マイナス23万7000円の大幅ダウン。収入が減れば買い控えに走るのは当然だ。売り上げが前年比2割増と絶好調に見えるネット通販大手・楽天市場でも、「客の1回当たりの平均購入金額は、一昨年の7400円から、昨年は7000円、今年は6600円と急速に下がっている」(広報担当)と消費の冷え込みに苦しんでいる。
ところが、菅首相が胸を張る景気対策には、個人所得や消費を増やす政策はほとんどない。あるのは地方のシャッター通りの再開発といった公共事業ばかりだ。福島県内の回転ずしの経営者がいう。
「企業の支店や営業所の閉鎖で夜の客はさっぱり。1皿800円のアワビは全く売れないのでやめてしまいました。商店街の再開発の話はあるけど、客がいないのに店を建て替えるために借金を負いたくない」
※週刊ポスト2010年10月29日号