「一に雇用 二に雇用」と叫ぶ菅首相が今国会での成立を目指しているのが、労働者派遣法の改正案だ。「非正規労働者をなくす」「企業が都合がいい時にクビを切れる制度は改める」と労働者保護の触れ込みで成立を急いでいる。
だが、当の派遣労働者たちから、「仕事を奪われる。余計なことはしないでくれ」と反乱が起きている。30代の女性派遣社員が怒りの声をあげる。
「改正されれば会社は派遣を契約社員にしなければならなくなるから、5人いる派遣のうち2人でいいといわれている。みんな正社員になれるようなバラ色ではない。仲間にはシングルマザーもいて、クビになれば路頭に迷う」
現在、派遣労働者は約302万人(3月末)。リクルートワークス研究所の試算によると、改正案に盛り込まれている「登録型派遣禁止」で11.2万人、「製造業派遣禁止」で6.4万人、「日雇派遣禁止」で9.2万人、重複を除いて18万人の派遣労働者が新たに失職する恐れがある。
302万人の派遣労働者の8割近くが「自分がクビ切りの対象になる」と心配し、半数以上が「法改正に反対」なのも無理はない(東大社会科学研究所調査)。
企業にしても、「製造業の下請け工場で派遣を禁止されたら海外に移転する」(電機メーカーの協力工場)、「引っ越しの7割は4月に集中する。日雇派遣で人手をやりくりしてきたが、常時雇用にしたら経営が成り立たない」(全日本トラック協会)と、悪影響が大きいことは明らかだ。
※週刊ポスト2010年10月29日号