為替レートはどうやって決定されるのか。そのひとつに「国際金融・資本取引と為替需給の関係」が挙げられる。円高、円安要因となる「国境をまたがるお金の流れと為替の関係」について、外為どっとコム総研代表の植野大作氏が解説する。
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為替に限らず、世の中のあらゆるものの値段は需給で決まりますが、為替の場合はその全容が見えないため、需給分析で相場の動きを正確に読むのは不可能です。
ただし、現実の為替取引の現場では、局所的に特定の参加者による売買の噂などが材料視されて、一時的にせよ為替相場に無視できない影響を及ぼす場面もあります。以下では、日本を巡る国際金融・資本取引のうち、部分的にある程度は把握できている主な項目について、円相場との関係を紹介します。
いわゆる金融・資本取引のうち、まず日本人が扱うお金の流れで代表的なのは、対外証券投資と対外直接投資です。対外証券投資とは日本の居住者が外国の有価証券(株式や債券)を売買することで発生するお金の流れですが、一般に外国証券の買いは円売り外貨買いで円安要因、売りは外貨売却の円買い戻しで円高要因になります。主なプレイヤーは銀行、生損保、年金基金、投資信託、事業法人、個人などです。
ただし、売買の担い手が、大手金融機関などの機関投資家である場合、現物と同時に先物の売買も複雑に絡めてリスク管理を行なっているほか、日本円を経由せずに外貨同士の決済で外国証券を売買することもあるため、実際の為替相場への影響を推し量るのは難しいといわれています。
一方、対外直接投資とは、日本企業が外国企業を買収して自分の傘下に収めたり、海外に生産拠点や現地法人を作る目的で進出することを指します。外国企業の買収や海外進出は円安要因、外国企業の売却や海外からの撤退は円高要因です。
また、為替環境が激変したときには日本政府が「為替介入」という形で外貨を売買することもあります。1990年代末期から2000年代初期に頻発した円売り介入は円安要因、1998年に実施されたことのある円買い介入は円高要因です。最近の急激な円高局面では、円売り介入が実施されています。
※マネーポスト2010年11月号