経済政策で迷走に次ぐ迷走を重ねる民主党政権。なぜこんな醜悪な姿になってしまったのだろうか。昨年8月の総選挙で国民が支持した姿と、わずか1年でここまで変わるものだろうか。
官僚や記者クラブが何といおうと、国民に約束したマニフェストを実行すればよかったのだ。半世紀も自民党政権が守ってきた既得権を失う者たちが、あの手この手で難癖をつけ、手先のマスコミを使ってネガティブキャンペーンを張ってくることなど、最初からわかっていたはずである。
乱暴な言い方だが、マニフェストに従った政治をしていれば、たとえ結果が悪くても、責任は選んだ国民にある。国民は、やはりダメだと思えば、次の選挙でまた政権を替えればいい。それが民主主義だろう。
地方分権、子ども手当、農業者戸別所得補償、高速無料化―いずれも既得権集団との対立を覚悟した政策だったはずだ。霞が関官僚は地方分権など絶対に嫌なはずだ。
育児・教育予算は、「自分たちが使ってこそ意味がある」と考える者たちにとって、直接給付の子ども手当は許し難い。同じ理屈で農業補助金に浴してきた農協や族議員、農業土木事業者たちは所得補償制度に反対し、税金と通行料金で不要な道路を造りたい人たちは高速無料化など認められるわけがない。
しかし、民主党は想像以上に「ひ弱」だった。予想されたはずの反発にビビり上がり、反動で既得権集団に完全にひれ伏してしまった。
皮肉なことに、困ったのは既得権政治をつくり上げた自民党である。これでは政権を取り戻す理屈がない。民主党にとって、既得権保護がそのまま保身になるというのは、そういう歪んだロジックなのである。もちろん被害者は国民だ。
※週刊ポスト2010年10月29日号