今国会で答弁に立った菅直人首相は、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の対応をめぐる野党の追及に、自信満々の様子でこう答えた。 「私と温家宝首相との懇談で戦略的互恵関係の推進を改めて確認した」 明らかに菅民主党政権は、“融和ムード”を演出しようとしている。しかし、ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「日本の立場を曲げて推進する戦略的互恵関係など無意味で、菅政権の対中外交は決定的な敗北外交だ」と喝破する。
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日本が中国の圧力に屈して、領海侵犯にも拘わらず、お咎めなしで中国漁船の船長を釈放したことは、「日本は原理原則のない国」「脅せば簡単に屈する国」との認識を国際社会に広げてしまいました。
今回に限らず、1972年の日中国交回復以降の両国関係を振り返れば、日本外交は敗北を積み重ねてきました。現在、中国はガス田「白樺」の掘削を開始した可能性が高いのですが、日本は中国を恐れてでもいるかのように、今東シナ海で何が進行中なのかさえ、明言しません。東シナ海ガス田については、日本政府は数十年間も満足な調査を行なっていません。その一方で東シナ海の開発を着々と進める中国に経済援助を与え続け、譲歩し続けたのです。その敗北外交の結果がこれなのです。
にもかかわらず、菅首相は温家宝首相との「懇談」の成果を強調したり、マスコミも両国が関係改善の方向に向かっていると報じるなど、盛んに緊張が緩和しつつあるというムードが作られつつあります。しかしそんなことでは、中国は図に乗るばかり、どんどん領土拡張への動きを強めてきます。
※SAPIO2010年11月10日号