日中外交における菅内閣の発言はあまりに軽く、乱れっぱなしだ。まずは9月14日、蓮舫行政刷新担当相は尖閣問題に対し、「領土問題なので毅然とした日本国としての立場を冷静に発信すべき」とやった。勇ましいのは結構だが、政府見解は「解決すべき領有権の問題は存在しない」。蓮舫大臣は、後に発言を修正した。
続いて9月21日、馬淵澄夫国土交通相は中国国家観光局副局長の表敬訪問を「諸般の事情で見合わせる」と発表。それを知らない仙谷由人官房長官は、「(中国の)ナショナリズムを刺激しないことを心すべき」と発言し、失笑を買った。
10月に入っても悶着は続く。枝野幸男幹事長代理が中国を「悪しき隣人」と呼んだことに対し、外相である前原誠司氏は「よき隣人として、戦略的互恵関係を結んで共存共栄の道を探るべき」と慌ててたしなめた。
「腹が立つ!」――8日の閣議後の会見で怒りを示したのは北沢俊美防衛相。11日にベトナムで開催された日中防衛相会談について、外務省が事前調整を滞らせたことに声を荒らげたのだ。その“犯人”と名指しされた仙谷氏は「自分で指示したのか覚えていない」「そんなに大きな話か」と“逆ギレ”する一幕も。
そして政権の最高責任者である菅直人首相だが、国会での追及に「(中国に)わが国の国内法に基づく粛々とした手続きを認めない雰囲気があり、大変問題があった」、船長釈放について「国内法に基づいて粛々と判断した結果だ」――。“シュクシュク”を連発するばかりで、国家を守る覚悟の言葉は遂に聞くことができなかった。
※週刊ポスト2010年10月29日号