貸金業法の改正により、消費者金融では年収の3分の1までしか借金ができなくなった。経営コンサルタントの大前研一氏は、この改正を「浅知恵」と切り捨てる。
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消費者金融には問題もあるが、「緊急避難用」として不可欠な役割がある。そもそも借金が年収の3分の1に収まるような人は、消費者金融には手を出さないだろう。消費者金融に駆け込む人の多くは、もう年収の3分の1以上借りてしまっている。そういう人たちは全く借りられない状況に追い込まれている。
また、改正貸金業法により借り入れの際に借り手は給与明細書や源泉徴収票で年収を証明し、業者側は指定信用情報機関に個人の借入残高のデータを照会することになった。収入のない専業主婦(主夫)の場合は、配偶者の年収を証明する書類や同意書を必要とする。
しかし、総借入残高が年収の3分の1以下かどうかをチェックするには、その人がこれまでにいくら借りていくら返したかという履歴をすべて寄せなければならない。それは至難の業である。多重債務者は名前のフリガナを変えたり、住所を変えたり、電話番号を変えたり、家族の名前を使ったり、あらゆる悪知恵を働かせてくるからだ。
※週刊ポスト2010年10月29日号