竹島が韓国に実効支配され、尖閣諸島も中国に掠め取られそうである。日本の領土が危ない。尖閣諸島を狙う中国に日本はどう立ち向かえばいいのか。杏林大学名誉教授の田久保忠衛氏が解説する。
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平和ボケしている日本人が知っておかなければならないことは、「実効支配」とは、国旗の掲揚などの象徴的な行為ではなく、その地域に国家権力が事実上及んでいることである。つまり、軍事行動すらも是なのである。
したがって、9月に尖閣諸島沖で発生した海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突で中国漁船船長を逮捕したことは、日本の国内法上の問題だけでなく、国際法上も正しいのである。
日本が尖閣諸島を実効支配している限り、中国は国際司法裁判所に提訴することはできないし、だからこそ、中国はどんな手段を使っても実効支配を奪い取ろうとする。
おそらく、この中国の横暴を国際的に解決する場所は、国連の安全保障理事会しかないだろう。日本は被害国として安保理に決議案を提出することができる。しかし、中国は常任理事国として日本の案を否定するだろう。中国が日本の国連常任理事国入りに反対している理由もここにある。ちなみに、台湾も尖閣諸島の領有権を主張しているが、台湾は国連に加盟していないため国連安保理に決議案を提出する資格はない。
このジレンマのなかで、日本が尖閣諸島の領有権を維持、実効支配し続ける方法は、海上保安庁の予算を増やして、巡視船を装備すること。それが最優先課題だ。世界第6位の海岸線を持つ日本の海上保安庁としては、巡視船の老朽化も含め、あまりにも弱体だ。これで、大量に押し寄せる中国・台湾の領海侵犯漁船を排除することなどできるはずがない。
また、現在のところ、領海侵犯を担当しているのは海上保安庁だが、海上自衛隊も出動できるよう法整備が必要であろう。海上自衛隊は武力攻撃された時のみ出動可能とされているが、中国・台湾の漁船が数百隻も領海侵犯してきたら日本政府はどうするつもりなのか。領海侵犯してきたものに対して、実力で排除する。そうしないかぎり、日本の尖閣諸島の実効支配は失われるしかないのである。
※SAPIO2010年11月10日号