たばこ税が増税され、財源不足に悩んでいた財務省はさぞ喜んでいるだろう、と思いきやそうでもないらしい。ジャーナリストの須田慎一郎氏がその裏事情を明かす。
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「マイルドセブン」が1箱300円から410円へ、「セブンスター」については1箱440円に、10月1日からたばこ税増税にともなって、たばこが大幅値上げされた。近年、大幅な税収不足が続く中にあって、唯一税収増が期待される分野と見ていいだろう。
国の台所を預かる財務省としては、とりあえずホッと一息なのだろうと思いきや、どうも事情はそう単純なものではないようだ。
「今回のたばこ税増税は我々にとっては痛し痒しですよ……」 旧知の財務省幹部がこうボヤく。なぜか。この幹部が続ける。
「今回のたばこ税増税は、財務省が主導権を握って実現したものではない。実を言うと、本当の立役者は、民主党の小沢一郎元幹事長なのです。つまり今回の増税は、極めて政治的色彩の強いものと言えるでしょう」
ならば小沢元幹事長の狙いはどこにあったのか。
「たばこ生産農家をはじめとするたばこ業界は、伝統的に自民党支持層が多いところです。こうした傾向は、今に至るもほとんど変化していないのです」(同前)
今回の増税によって、たばこの消費量の減少トレンドにさらに拍車がかかるだろう、と予想される。そうなると結果的に打撃を受けることになるのは、他ならぬ生産者サイドだ。つまり自民党の支持基盤の一角が大きく揺らぐことになりかねない。今後、短期間にさらなる増税などということになったら、たばこ業界が大打撃を受けることは必至だろう。
「小沢元幹事長としては、そうした事態を回避するためにたばこ業界は民主党にすり寄ってくるはず、と読んでいたのでしょう」(同前)
様々なシミュレーションがあるが、予想以上に売り上げが落ちれば、逆に税収減ということもあり得る。
「慎重に検討したかったが、我々とは別の思惑で決定されたという思いもある」(同前) たばこ税が政争の具となってしまったことで、財務省は喜んでばかりもいられないといったところだろう。
※SAPIO2010年11月10日号