中国漁船による尖閣諸島領海侵犯事件から1か月。船長の逮捕→釈放の経緯を辿ったこの件について、ジャーナリストの櫻井よしこ氏はこう分析している。
***************************
中国は船長逮捕の9月8日から12日までの間に、計5回にわたって丹羽宇一郎大使を呼びつけました。一方、日本が中国の駐日大使を呼んだのは一度きり、それも拘束されたフジタ社員の安全確保を求めてのことでした。
本来、大使を呼びつけるべき立場にあるのは日本です。領海侵犯に断固として抗議し、二度と繰り返さないよう厳しく求めるのは主権国家として当然です。ところが日本は抗議どころか中国の理不尽な圧力を黙って受け止め続けました。
中国は、ガス田の日中共同開発をめぐる第2回会議を延期し、全国人民代表大会副委員長の李建国氏の訪日も延期。反日デモも相次ぎました。圧力に屈して、日本政府はまず9月13日、中国船員14名と船の返還に応じました。このとき仙谷氏はこう述べています。
「私の予測では、14人と船がお帰りになれば、また違った状況が開かれてくる」
この予測が的外れだったことは、すぐに明らかになりました。船員らが「お帰りに」なった後、中国はさらに強硬姿勢をエスカレートさせたからです。
9月21日、国連総会のためにニューヨークを訪れていた温家宝首相は、中国人船長を「即時に無条件で」釈放することを求め、「釈放されなければさらなる行動をとる」と発言。前後して中国企業の1万人の社員旅行や各種の交流イベントの中止など、あらゆる方面で圧力をかけ続けました。
中国がレアアースの禁輸に踏み切ったことが判明したのは翌22日、フジタの社員4人が中国国内で拘束されたのは、23日夜です。中国がレアアースの禁輸に踏み切ったことが判明したのは翌22日、フジタの社員4人が中国国内で拘束されたのは、23日夜です。そして24日、那覇地検が中国人船長の釈放を決定し、翌25日船長は“英雄”扱いで中国に凱旋しました。
日本政府の弱腰に、中国政府は船長釈放後も圧力をかけ続け、「賠償と謝罪」さえ要求しました。繰り返しますが、謝罪と賠償を求めるべきは日本側なのです。
※週刊ポスト2010年11月5日号