対中国における“外交連敗”。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、憂国の念から菅直人首相、仙谷由人官房長官への“疑義”を隠そうとしない。以下のよう語っている。
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菅氏と仙谷氏の頭のなかには、10月末のハノイでの温家宝首相との首脳会談の実現や、11月に横浜で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力)への胡錦濤主席の出席しかないかのようです。国益よりも自らの外交の「成果」や保身を優先し、中国の機嫌を損ねないよう譲歩を続ける。いったい何度してやられれば目が醒めるのでしょうか。政権の利益を国益に優先させるかのような菅、仙谷両氏に政権を担う資格はないのです。国益にまさる日中関係もあり得ないのです。
2人の国家観は極めて歪です。仙谷氏は10月4日、枝野幸男幹事長代理が「(中国は)悪しき隣人だ」と批判したことに反論し、歴史を引き合いに出して中国を擁護しました。
清朝の末期から英米の帝国主義によって「民族としても国家としても大変つらい思いをしてきた」とし、日本も「戦略および侵略的行為によって迷惑をかけていることも、被害をもたらしていることも間違いない」と語りました。
一方的に日本を悪とする自虐史観には呆れます。それ以前に、異なる時代の異なる事柄を同じ俎上に載せて、眼前で進行中の中国の理不尽な行為に目をつぶる政権にまともな外交など期待するべくもありません。これでは、領土領海という国家の最重要の問題で日本が敗北するのは目に見えています。
それにしても菅氏も仙谷氏もなんというご都合主義の人間でしょうか。両氏とも弱者の側に立つ人権派を標榜してきたのではないでしょうか。しかし、彼らの人権感覚はイデオロギーの色に染められたものでしかなかった。過去に日本によって苦しめられた人たちの人権問題には熱心だが、今現在、中国で行なわれている苛烈な人権侵害には目をつぶる。
菅首相はノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏について、受賞決定直後に各国首脳が祝辞を述べる中、ずっと沈黙を守りました。国会での質問に答える形で渋々「釈放が望ましい」と語ったにすぎません。
ダブルスタンダードの首相と官房長官は、日本の名誉を貶めるだけでなく、中国の心ある人々への中国政府の弾圧政策を、事実上、支援しているのです。
菅首相は「最小不幸社会」をめざすといいます。こんな政治家が国の首相、官房長官であることこそが、日本を最大不幸社会の悲劇に追い込んでいくのです。
※週刊ポスト2010年11月5日号