尖閣諸島の問題で、なぜ、中国は激しく抗議し大規模な反日デモまで仕掛けてくるのか。それは、中華思想と共産主義に毒された中国にとって日本は常に悪でなくてはならないからだと、作家の井沢元彦氏は指摘する。世界一になっては、転落を繰り返してきた中国。歴史に学ぶことのない彼の国は、再び同じ過ちを繰り返そうとしている―。
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おそらく中国人は今「いつ中国は世界一になるか」と、その日を指折り数えて待っているのだろう。 いや、若者たちの一部は、既に中国は世界一の国になったと考えているかもしれない。北京オリンピックでは中国勢が大活躍したし、上海万博も成功している。軍事力も年々増強し、世界一の軍事大国アメリカですら、中国と戦って勝つことは有り得ない。もはや、中国は世界一の国だと確信しているかもしれないのだ。
しかし、もし私が膨大な人類の知恵の集積である歴史に基づいて、中国あるいは中国人に、忠告できるとするならば、それは「とんでもない考え違いだ」ということだろう。
実は中国はすでに世界一になったことが何度かある。誰もが認めざるを得ないのが明の時代だろう。アメリカなど影も形もなく、中世の闇が支配していたヨーロッパも、明の高度な文明には及ぶべくもなかった。
文化などどうでもよく軍事力だけがすべてというなら、明より先の元の時代がそうだし、唐の時代もローマ帝国というライバルがいたとはいえ、世界の一、二を争う国家であったことは間違いない。
こう指摘すれば、歴史家でなくても中国という国家、あるいは中国人という民族の持つ最大の問題点が何かは明確に見えてくるだろう。そう、「世界一にいつなるのか?」ではなくて「なぜ過去に何度も世界一になっているのに、それを維持できなかったのか」ということなのである。
典型的なのは清の時代だろう。
清が建国された頃、世界の国家の中で清と戦って勝つことが可能な国家はなかった。当時の強国といえば、世界を植民地化したスペインでありポルトガルだろうが、この両国ですら清と戦って勝つなど夢の夢であった。
ところが、その清は19世紀になると、アヘン戦争でイギリスに敗れるなど、欧米列強に連戦連敗し、さらには、日本にすら日清戦争で敗れるという屈辱をなめた。
※週刊ポスト2010年11月5日号