お土産用うどんセットにも似顔絵が入るなど、話題の女性経営者。年間300万人が県外から足を運ぶ“讃岐うどんブーム”に火を付けたのが、香川県民なら誰もが知る“るみばあちゃん”こと、池上製麺所 池上留美子さん(78)である。
「国鉄職員だった主人が、57年に人員整理でクビになり、迷った末に製麺所を開きました。当時は四国八十八か所巡りのお遍路さんへの接待にうどんを出すのが慣わしで、どこの家庭でもうどんを打てたんです」
製麺所を始めた頃は1玉5円。「小麦粉100%で不純物は一切入れてない。うどんの命は水と塩加減。天候や気温によって水や塩の加減をするだけです」
平日で200食、土日はその3倍以上を売り上げる。今も現役で忙しい毎日を過ごす池上だが、目下の楽しみは弟子たちの指導。2年間の修業を経て地元で店を開いた“池上門下生”が、現在、全国に散らばっている。るみばあちゃんは、「主人とやってきたことを教えるだけ」と目を細めながら、今日も店に出て温かく客を迎えている。
※週刊ポスト2010年11月5日号