近年の若者には「内向き」指向が顕著。若手社員の意欲低下は企業経営にも影響が甚大だから看過できないのだが……。 無気力がそうさせるのか、内向きな若者には自立していない者が多いという。物流企業の人事担当者の話。
「親と一緒に内定式に出席した男子学生がいたのには驚きました。親離れできない大人がいい仕事をできるとは思えない。採用は失敗でした」
人材育成コンサルタントの橋本尚美氏も若者に危機感を持つ。
「20代の『ゆとり社員』には、常識を備えていない人が多いんです。ある地方銀行の新入社員は、お茶の淹れ方すら知らなかったといいます。携帯電話世代の彼らは、知らない人からかかってくる職場の電話に出ることも苦手なようです」
誰しも最初は未熟だが、向上心や上昇志向がなければ人は成長することはできない。出世意欲のない若手社員の増加は、企業経営者にとっては脅威に違いない。ただ、同志社大学政策学部の太田肇教授は若者に同情的だ。
「会社員の頂点である社長が憧れの対象ではなくなっています。この不況下で責任ばかりが重くなって名誉や金銭は以前より得られません。終身雇用の崩壊後も能力を正当に評価する制度が広がっていない。責任が増える出世よりも安定を求める若者の傾向はやむを得ないのです」
これでは国際競争力は落ち込む一方ではないか。
※週刊ポスト2010年11月5日号