中国やインドなどの経済成長著しい新興国への投資がブームとなっているが、いつまでリターンが期待できるのか。経済アナリストの木下晃伸氏が解説する。
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世界に投資するといっても、何も考えずにまんべんなく分散しているだけでは思うようなリターンは望めない。株価上昇が期待できる、すなわち成長している国や分野に絞り込んではじめて大きなリターンが期待できるのだ。
国を対象とする場合、デフレが進行し、成熟社会に陥りつつある先進国は避けたい。ここはやはり、インフレが進み、今後も急成長が見込める中国やインドといった新興国に目を向けるべきだろう。
ただし、資産を殖やすために肝心なのは、成長し続けるところに投資をすること。その投資対象がいつまでも成長すると考えるのは“幻想”にすぎない。
日本はいうまでもないが、たとえば、ヒューレット・パッカード(HP)はそのブランド力で先進国市場を席巻し、パソコン世界1位の座についた。だが、今や中国のレノボや台湾のエイサーに取って代わられようとしている。同じように、今は成長著しい新興国でも、将来的には先進国同様にデフレ成熟社会に向かう可能性を頭のなかに入れておくべきだし、やがてはレノボやエイサーに投資妙味がなくなる日が来ることも意識しておく必要があるだろう。
では、世界のほとんどがデフレ成熟社会になるとどうなるか。
格好の見本が日本である。株高が期待できるような、投資家にとってよい企業を見分けるのが困難になるだけでなく、企業破綻リスクも高まる。株式投資で値幅を狙う手法が難しさを増し、株から債券へと資金が流入。結果的に利回りというインカムゲイン狙いの投資が中心となる。だが、こうした状況では元手の潤沢な資産家しかまとまった収益を得ることは難しい。資産の少ない投資家はFX(外国為替証拠金取引)などで一攫千金を狙うしかなくなるのだ。
来るべき次の世界が到来すれば、持てる者と持たざる者の格差は拡大する。だからこそ、そうなる前に、新興国に投資をして資産を殖やし、次なる世界に備えておくしかない。
すぐさまバブルが到来して崩壊するような「バブル頻発の時代」に、このような投資チャンスは長くは続かない。新興国の成長がピークを迎えるこの10年以内が勝負だ、と私は見ている。
※マネーポスト2010年11月号