尾を引く「尖閣問題」。この問題に対する日本政府の一連の対応のまずさ、展望の甘さを、ジャーナリストの落合信彦氏が批判する。
*****************************
今回の事件対応で愚の骨頂だと思えたのは、菅直人首相や仙谷由人官房長官が「中国を刺激したくない」と考えて、衝突時のビデオを公開しようとしなかったことである。菅は首相でありながらビデオを見ていないと、国会答弁で言ってのけた。
仙谷に至っては記者会見で、「(ビデオは)刑事事件の証拠なのだから公表しない。刑事事件捜査は密行性をもって旨とするというのは、刑事訴訟法のイロハの『イ』だ」などと、弁護士であることを笠に着て偉ぶってみせた。そんなところで法の原則論を振りかざすならば、なぜ明らかな公務執行妨害を犯した人間を、処分保留などという曖昧なかたちで釈放したのか。内弁慶にも程がある。
今回の漁船の乗組員は、明らかに軍の訓練を受けている人間だった。船ごと体当たりするなど、訓練を受けていなければできるものではない。つまり、中国は今回の一件で、日本を試していた。日本の指導者は骨があるのか、肝が座っているのか、新政権をテストしていたのだ。
菅や仙谷は、箸にも棒にもかからない初期対応をした上に、いまだに「戦略的互恵関係を築く」などと戯言を言っている。マスコミも“雪解けムード”などと報じているが、これでは中国がさらに図に乗るに決まっている。繰り返すが、中国は交渉や話し合いをしようにも、一筋縄でいく相手ではない。
※SAPIO2010年11月10日号