「余った野菜を捨てるのがもったいない」――そんな思いから主婦が始めたビジネスが、いま年商6億円を超えるほどに成長している。
北アルプスの常念岳を望む長野県安曇野市。午前7時50分になると、近隣の村から旬の野菜や果物を軽トラックやバイクの荷台にのせた農家の主婦たちが集まって来る。
道の駅『アルプス安曇野ほりがねの里物産センター』の搬入口は、あっという間に中高年の女性でいっぱいになった。自宅の畑でとれた白菜、大根、長ねぎ、里いも、ヤーコンそして名産の野沢菜、りんご。朝とれの新鮮な野菜、果物は艶やかで大ぶりだ。 8時半の開店時間。外には40人ほどの客の行列ができた。ドアが開くと同時に、お目当ての野菜や果物を目指して買い物カートを走らせる。店内は一瞬にして活気に満ちあふれた。
この物産センターの売り上げは、年間6億5000万円。年間45万人の客が訪れ、いまや観光バスの立ち寄りスポットにまでなっている。設立当初はほんの数百万円しかなかった売り上げは、いまや300倍以上、昨年は6億5000万円を突破した。
もともとこの物産センターは、23年ほど前に近隣の農家の主婦たち7人が始めた野菜の直売所が前身。
現在、組合員数は31才から88才までの152人。組合員が持ち回りで毎朝3~4名で務める「朝当番」は、8時半~10時半までの忙しい時間帯に、リーダーとなってパート職員たちを仕切る。レジができる人はレジを担当し、できない人は商品の袋詰めをしたり、売り場の掃除をしたりしてお客さんが買い物をしやすい環境づくりに気を配っている。
今年の夏は猛暑だったせいで野菜が高騰したが、ほりがね物産センターではレタスやキャベツなどの野菜の値段は一貫して1個100円を守り通した。 年度初めに66才の委員長以下8人の女性からなる価格委員会で野菜の価格を決定したら、市場価格が上がっても、それには影響されないようにしている。
※女性セブン2010年11月11日号