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「挽き割り納豆」の関東進出は80年代の手巻きブームが追い風

 ビル・ゲイツが530億ドル、ウォーレン・バフェットが470億ドル――世界の「立志伝中の人物」「大金持ち」の資産を聞いても、自身の成功へ向けて参考になるような“現実味”は湧いてこない。だが、それが「同じ地元出身」の成功者であれば、湧いてくるイメージは大きく変わってくる。

 納豆メーカー・ヤマダフーズ社長の山田清繁氏(70)は1940年生まれ。1982年社長就任。2010年、乳酸菌飲料の製造・販売に進出。

 同社が本社を構える秋田は納豆発祥の地。平安時代、「後三年の役」の時、源義家の兵糧の煮豆が糸を引き、食べたら美味だった――という伝説が残る。山田氏は大学卒業と同時に、父が経営する「金沢納豆製造所」に入社した。当時、東北では順調に販売網を広げていたが、関東では無名だった。茨城・水戸の粒納豆が主流で、秋田の挽き割り納豆は「くず納豆」と呼ばれ、敬遠されていたのだ。

 山田氏はバッグに自社製品を詰めて毎日のように上野行きの夜行列車に乗って上京し、スーパーに売り込みをかけた。追い風となったのが、1980年代の手巻きずしブーム。納豆巻きにしやすい挽き割り納豆の需要が増し、関東での認知度が一気に高まった。

 山田氏の経営信条は「走りながら考える」。1996年にはかつての“敵地”だった茨城県内にベルサイユ宮殿を模した巨大工場を竣工した。

※週刊ポスト2010年11月5日号

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