2004年の監督就任以来、卓抜した手腕を発揮している中日ドラゴンズの落合監督。そんな落合監督がこだわるのはあくまで「勝つ野球」である。そのためには自分なりの「理詰め」に徹し、私情を交えることはおろか、周囲へ余計な配慮などしない。
その徹底した姿勢を支えているのは、三冠王3度という、現役時代の輝かしい成績から来る自信だ。神主打法と呼ばれる独特のフォームで、批判する評論家陣を尻目に、数々の記録を塗り替えていったという自負がある。ロッテでプレーした現役時代、先輩でエースだった村田兆治氏は、落合独特の練習法に度肝を抜かれたという。
「打撃練習なのに、バットの芯を外したゴロばかりを打っている。どうしたんだと聞いたら、“ヒットでなくても三塁ランナーをホームインさせられるボテボテの内野ゴロを打つ練習”というので驚きました」
並の野球選手の水準を超えた打撃理論。同様に、誰よりも優れた実績を残してきた「監督論」も揺るがない。自分は舞台裏に控え、選手を立てることでも知られる。失敗した選手を責めず、叱らない。だが、それは浪花節的な理由ではない。
「オレよりすごい選手なんていないんだから、ミスした選手に怒ったってしょうがないでしょ」
こう言い切れるのも落合監督ぐらいのものだろう。
※週刊ポスト2010年11月12日号