さて、時はセンゴク時代。この低レベルな政局の裏には、国民生活より自分たちの権力と小金が大切な、あの人がもちろんいる。
仙谷由人・官房長官は、北海道補選後の政局について岡田幹事長に非常にわかりやすい指示を出していたとされる。党執行部に伝えられる「仙谷指令」の中身はこうだ。
〈政権運営の最重要事項が2つある。1つは小沢追放。これは離党まで考える必要がある。もう1つは公明党対策。参院19人の存在は、それこそ地球より重い。その橋渡し役をやれるのは野中広務だ〉
小沢抹殺と公明取り込み。それが目的であれば、「政治とカネ」バカ騒ぎや企業献金バラ撒きの動機も理解しやすい。
この官房長官の器が小さいと感じるのは、目の前の政敵(=小沢)を排除するためには、政治の本筋も、同僚議員も、有権者さえも投げ捨てて平気だからである。補選で民主党から立候補した中前茂之氏にはお気の毒だが、仙谷―岡田ラインは、最初からこの選挙を負けてしまおうと考えていたフシがある。
選挙戦終盤、仙谷側近の枝野幸男・幹事長代理は選対幹部の会合で、なんとこう言い放っている。
「中前さんには次の総選挙で頑張ってもらえばいい」――早々の“投了”に出席者たちは絶句した。
岡田幹事長は、同選挙区で大票田を持つ友党の新党大地への協力要請をサボっていた。同党の鈴木宗男・代表がブログで暴露した。
「負けるべくして負けた選挙である。新党大地関係者を大いに使うべきなのに、疎外された感じだった。北海道5区では、いつの選挙でも3万票以上獲得しているこの実績を評価しないのでは、話にならなかった」
自民党との票差はちょうど3万。本気で勝つつもりなら方策はあったのだ。
それでも菅直人・首相は、政権発足後初の国政選挙だから、何とか勝ちたかった。それを押しとどめたのが岡田幹事長である。
「総理が応援に行く情勢じゃない」と述べて菅氏の現地入りを拒み、敗戦後の会見では「もうちょっと競っていれば別の判断もあった」と、菅氏に足止めしたことを言い訳した。
「総理が応援に行きたいと言い出したとき、仙谷さんは“何考えてんだ”と猛反発した。総理が現地入りして負ければ、“敗戦は小沢のせい”といえなくなる。仙谷さんは今、野中広務氏、自民党の大島理森・副総裁、逢沢一郎・国対委員長らと気脈を通じて『小沢喚問』を工作している。ここまでの流れは予定通りだ」(民主党執行部派議員)
※週刊ポスト2010年11月12日号