不況不況といわれる昨今だが、主婦の力で力強く商売をし、成功している人々もいる。佐賀の「呼子甘夏ゼリー」がそのひとつだ。
「佐賀県加部島の甘夏を絶やすわけにはいかん、どげんかせんといかん、と私たちが奮起したからこそいまがあるんです」―甘夏柑の皮をくり抜いて器に見立て、保存料・着色料は無添加、ほとんど砂糖を使わずに仕上げたゼリー『呼子夢甘夏ゼリー』は、その濃厚な果汁で全国的にも人気を集めている佐賀の特産品だ。これを製造販売しているのが地元の「甘夏かあちゃん」。主婦グループ「島ホリおこしかあちゃん組」が運営している。現在、ネットでの売り上げは30%を超え、全体で5000万円を記録している。
「甘夏かあちゃん」代表の山口めぐみさん(56)を中心とした主婦3人が考えたのは、プラスチック容器のゼリーならどこにでもあるが故に、佐賀県加部島ならではの“売り”をつくっていかなければ、とのことだ。その結果、容器を甘夏柑の皮にした。すると日が経つにつれ、皮から出てくる苦味が増して、それがいい味を出してくることに気づいた。
「これも味に影響しているんですね。果汁しぼりは機械でできますが、皮の器のくり抜きはすべて手作業。1日700個つくるのがやっと、と手間はかかりますが、買ってもらって食べてもらうために努力は惜しみたくありません。最初は、田舎特有の“出る杭は打たれる”環境のなかで、“余計なことせんでもいい”と批判的だった人からも、いまは“よく頑張っている”といってもらえるようになりました」
と山口さんは喜ぶ。いまでは高級ホテルのデザートにも使用され“人気お取り寄せ商品”にも選ばれるようになった。
「利益を上げることももちろん大切ですが、私たちは“甘夏柑を知ってほしい”“加部島を知ってほしい”という思いで、ここまでやってきました。ゼリーが有名になって地域に貢献できたことは本当にうれしいです。後の世代につなげるためにも、いま何かをみんなでしていく必要があると思います」。山口さんはそう使命を感じているという。
不況が続き、人々の心も楽しいことばかりではない時代。主婦たちはちょっとした配慮と工夫で逆風に立ち向かい、再び元気を取り戻している。
※女性セブン2010年11月11日号