中国は軍事的な巨体を膨張させ続けている。隣人の謎多き行動について、櫻井よしこ氏はこう指摘している。
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ここで私たちが歴史から学ばなければならないのは、宥和策は無意味だということです。1938年9月のミュンヘン会議で、ヒトラーに説得された英国のチェンバレン首相らは、ドイツのチェコ侵略を容認しました。いわゆる「大人の対応」ですが、それが結果的にドイツの勢力拡大を許し、大戦を生じさせるに至りました。
対して、英国議会下院でドイツの軍拡を指摘し「われわれは後顧の憂いのない安全保障の一大努力をすべきだ」「今は、わが国が目覚める最後のときだ」と説いたのが、後に英国を率いてドイツの侵略を止めた、チャーチルでした。
ヒトラーと同じ「侵略的構造」をもち、軍事力を背景に領土拡大をはかる中国に対しては、いかなる宥和策も無意味です。ところが、中国を刺激しないよう、菅、仙谷両氏は衝突ビデオさえも公開しようとしません。「大人の対応」だといって全面的に中国に譲歩する菅政権の宥和策の、なんと危ういことでしょうか。
※週刊ポスト2010年11月12日号