北京の遊園地で踊る痩せたミッキーマウスやゆがんだ顔のドラえもん。露店などで堂々と売られるブランドバッグのコピー商品。そんな印象から中国を単なる「パクリ大国」と思っている読者も多いだろう。しかし、事態はさらに深刻化している。中国を相手にした知的財産権問題は「新たな局面」に入ってきた。日本はどう対処すべきなのか。ジャーナリストの中島恵氏が報告する。
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中国での商標権侵害問題が大きく注目されたのは05年。双葉社の漫画『クレヨンしんちゃん』事件だった。中国企業が「しんちゃん」の中国語表記(?筆小新)と絵柄で、おもちゃやメガネなど複数の商品分類で先に商標登録していたことがわかり、双葉社は中国で同じ表記の商品は販売できなくなった。
同社は2005年に中国で行政訴訟を起こしたが敗訴。つまり「ニセモノ」が「本物」に取って代わったのだ。
この1~2年を見ると、中国での知財対策に多額の費用を投じている大企業の被害は減ったものの、中小企業や地方自治体などでは被害が広がっている状態だ。
では、日本企業や地方自治体はどのような対策を立てたらよいのだろうか。語るのは、オンダ国際特許事務所の谷尾唱一氏だ。
「将来まで見据えた防衛策が必要です。日本で商品を発売する際、すぐに中国での販売予定がなくても先に必要な商標権を出願しておくこと。知らない間に中国で模倣品が出回っていることもあり、いざ進出する時に調べても遅いからです」
とはいえ、日本から商標を申請する場合、化粧品、金属容器などといった商品分類のひとつにつき約15万円程度の費用がかかる。分類が増えれば相当な額にのぼるため、やみくもに出願するわけにもいかない。
谷尾氏が続ける。「どんな商品をどのように売りたいのか。まず企業として経営戦略を立てるべきです。その戦略によって、取得するべき商標権を選択する必要があります」
※SAPIO2010年11月10日号