尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、海上保安庁が録画したビデオが11月1日、衆参両院の予算委理事ら30数名の国会議員に限り公開された。
中国漁船による犯罪行為を立証するビデオがありながら、中国側にいまなお厳重な抗議もできずにいる菅政権の“弱腰外交”ぶりが批判されるのも当然だろう。
かつて日本は米ソ冷戦下の1983年、大国・ソ連の犯罪を暴いて世界中から喝采を浴びたことがある。大韓航空の旅客機ボーイング747が、ソ連軍の戦闘機によって撃墜され、乗客乗員計269人が死亡した事件だ。
ソウルを目指しニューヨークを発った大韓機は、経由地のアンカレッジを出発後、コースからはずれてソ連領内を航行。スパイによる領空侵犯と判断したソ連軍戦闘機がミサイルで撃墜した。このとき、ソ連軍パイロットが口にした「発射」などの無線を傍受していたのだが、日本の陸上自衛隊だった。
国政的非難を恐れたソ連は当初、「領空侵犯機は日本海上空に飛び去った」などとしていたが、アメリカが日本で傍受されたその録音を事件当日にメディアで公表。さらに5日後の国連安保理に提出して、ソ連による暴挙が白日の下に晒された。
国際情勢に精通するジャーナリスト・惠谷治氏がいう。
「当時の中曽根政権がまさに政治判断の下、アメリカと連携し、大国・ソ連を向こうに回して傍受記録の提供に踏み切ったのは明らかです。菅政権も政治主導というなら、事件発生直後にビデオを公開して、中国側の犯罪を明らかにすべきだったのです」
中国政府はこれまで、海保による船長らの拘束をあくまで「日本政府による不法行為」と主張し、「謝罪と賠償を求める」という強硬姿勢を貫いている。
※女性セブン2010年11月18日号