今クールで話題のドラマのヒロインたちは、おしゃれには無頓着、男社会の中でなりふりかまわず働いて、いいたいことをガツンという。いままでの人気ドラマのヒロインとは一線を画す彼女たち。身なりにかまわず仕事には一直線で、好きなように振る舞う姿は“おっさん”のよう。
各局が好調なスタートを切った秋の新ドラマ。今クールの主役の女たちには、こんな顔ぶれが並んだ。
アーミーパンツにナポレオンジャケットをはおり、ドスの効いた声でいい放つのは、『ナサケの女~国税局査察官~』(テレビ朝日系、木曜21時)で米倉涼子(35)が演じる国税局査察官。
ミリタリージャケットにニット帽といういでたちでガムをくちゃくちゃ噛みながら不正会計を嗅ぎつけ、「その金、返せよ」と容赦なく追及するのは、『黄金の豚~会計検査庁 特別調査課~』(日本テレビ系、水曜22時)で篠原涼子(37)が扮する会計検査庁調査官。
男性部下たちをアゴで使い、会社に寝泊まりしてそのまま現場に向かうのは『パーフェクト・リポート』(フジテレビ系、日曜21時)で松雪泰子(37)が演じるテレビ局報道記者。
こんなヒロインが揃って登場したのは何でなの!? 芸能評論家の肥留間正明さんは、時代とともに支持されるヒロイン像は変化してきたという。
「浅野温子・浅野ゆう子のW浅野が共演した『抱きしめたい!』(1988年・フジテレビ系)に代表されるように、1980年代後半は、暮らしにも、恋人にも、仕事にも、おしゃれなファッション性を求める欲張りなヒロインが主流で、バブル全盛期を象徴する“都市生活理想女”が支持されました。
その延長線上で、1990年代の初めには『東京ラブストーリー』で鈴木保奈美が演じた赤名リカや『101回目のプロポーズ』(ともに1991年・フジテレビ系)で武田鉄矢の生死をかけた求愛を受けた浅野温子のような“男振り回し女”も出てきました」
1990年代後半には、木村拓哉(37)と山口智子(46)が共演した『ロングバケーション』(1996年・フジテレビ系)が大ヒット。 「ヒロインが相手の男性より7才年上という設定で、いうなれば“年下男を手玉に取る女”。このドラマがきっかけで、恋愛に年齢は関係ないという時代が到来しました」(肥留間さん)
そして2000年代にはいると、ヒロインの“恋愛力”はさらにパワーアップ。
最高視聴率34%を超えた『やまとなでしこ』(2000年・フジテレビ系)で松嶋菜々子(37)が演じたキャビンアテンダントは、いい男をゲットするには、見栄も張るし、嘘もつくという究極の“計算する女”。
「合コンに精を出し、恋に貪欲。いい子ぶらずに女同士では地を出すという新しいヒロイン像が世に受け入れられました」(肥留間さん)
恋愛至上で進化を遂げてきたかのようなテレビドラマだが、2000年代後半になると、『ホタルノヒカリ』(2007年・日本テレビ系)で、綾瀬はるか(25)が演じた“干物女”のような等身大のヒロインや、『Around40~注文の多いオンナたち~』(2008年・TBS系)で、天海祐希(43)が演じた精神科医のようなアラフォーのヒロインが増え、描かれる女性像が多様化してきた。
※女性セブン2010年11月18日号