最近、中国では「反日」機運が高まっているが、その一方で、中国人による「日本買い」が広がっている。中でも日本の土地・不動産の買い漁りは激しく、ノンフィクション作家の河添恵子氏は今こそ法規制が急務だと主張する。
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なぜ今、中国人は「日本買い」に邁進しているのか?
中国には「狡兎三窟」(こうとさんくつ)という言葉がある。「ずる賢いウサギは3つの逃げ場を用意している」という意味だが、昨今の富裕層の資産管理も然り。資産は現金や預金だけでなく不動産や有価証券など3つ以上に分散する。不動産も国内、海外数か所と幾つも持ちたがる。「愛国」を表看板で掲げつつも、共産党政府系の人間を含め、政府・他者を信用していないことが根底にある。
しかも中国国内では土地の所有は認められておらず、借地権のみ。なにより環境が劣悪で、食材にも不安があるという中で、リスク分散、投機目的、新たな利権確保のひとつとして「日本買い」がある。皮肉なことに、日本人にとっては経済の低迷続きで「不安」な日本も、中国人にとっては〝腐っても鯛〟高値安定の優良物件なのだ。
そうした現実に対して日本政府はあまりにスキだらけだ。
例えば、外国人土地法という法律がある(大正14年に制定)。その第4条には、「国防上必要ナル地区ニ於テハ勅令ヲ以テ外国人又ハ外国法人ノ土地ニ関スル権利ノ取得ニ付禁止ヲ為シ又ハ条件若ハ制限ヲ附スルコトヲ得」とある。だが、この法律自体が、現在は形骸化している。
2008年頃から、長崎県・対馬での韓国資本による土地取得が問題になったのを機に、同法が注目された。当時、政府はこの法律の活用を見送る答弁を行なったが、むしろ同法を強化して、例えば国防上の拠点や北海道の水源地など国民の安全・安心にかかわる土地の場合、外国人に対しては借地権に限定したり、取得数と面積、場所の制限を設けたり、不動産取得税の税率を大幅に上げるといった対策が急務ではないだろうか。
実際、北海道の町村では、外国資本による「水源狙い」の土地取得に用地買収で対抗したり、条例によって開発・土地取引を規制する動きも広がっている。
※SAPIO2010年11月10日号