日本固有の領土である尖閣諸島や北方領土に対して周辺国からあからさまな挑発が繰り返されている。そうした事態について、仙谷由人・官房長官、前原誠司・外相らの決めゼリフは、「毅然として対応する」だ。
言葉はそれで結構だが、彼らの「毅然」には凄味も戦略もないから、まるで弱虫の子供がずっと遠くから「バ~カ、バ~カ」と悪態をついているような印象しか受けない。
こういうのは毅然とはいわず、「蛮勇」と呼ぶ。同盟国アメリカの対日外交スペシャリストで、日本の政界、官界では超有名人のA氏が「匿名なら」と断わって、偽らざる正直な論評を披露した。
「日本語の『毅然』は、英語ならdauntlessly(恐れを見せずに)とかfirmly(断固として)などと表現するが、菅政権の外交はこれには当たらない。情報収集能力が乏しく、相手がどう出てくるかわからない、それでも闇雲に強い態度を取ることは、英語ならreckless(向こう見ずな)、あるいはheadstrong(頭の堅い)と表現すべきもので、私の知る日本語では『蛮勇』ということになる。とにかく外交としては全く評価できない馬鹿げた態度だ」
A氏は、象徴的な例として、メドベージェフ大統領の北方領土訪問に対して前原外相が「駐ロシア大使を召還する」と発表したことを挙げた。
「もし本当にロシアの横暴に抗議して大使を召還するなら、そういえばいい。前原氏はそれさえ明言せず、一方で『APECでの首脳会談は予定通り行なう』『日ロ経済関係は不変だ』などと、いわずもがなのことをいう。これでは外交的に何のメッセージも伝わらないし、中国や韓国にもナメられてしまうだけだ」
※週刊ポスト2010年11月19日号