領土問題で迷走を重ねる菅政権。頼みの綱は同盟国アメリカだが、菅政権は、すでにアメリカから見捨てられている。ロシア、中国の増長もそれを見透かしているからだと見れば、なぜ急に外交問題が多発したのかわかる。
クリントン米国務長官は盛んに「尖閣は日米安保の範囲に含まれる」と述べて前原氏や日本のマスコミを喜ばせているが、これが本当は「尖閣に何かあっても米軍は動かない」という意味であることは週刊ポスト10月15日号で報じて大きな反響を呼んだ。重複は避けるが、対米ポチ外交の極みだった小泉政権末期の2005年にアメリカと結んだ合意で、
〈日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する〉
と定め、つまりは「(尖閣を含む)島嶼(とうしょ)部の問題は自衛隊が対処する」と決めたのである。 だから、「安保通りに対応する」とは「合意の通り、日本が動いてね」という意味なのだ。
オバマ政権の外交政策に関わるシンクタンクの日本問題専門家はこう指摘する。「もちろん状況にもよるが、無人島である尖閣諸島の領有問題くらいでアメリカが中国と戦争状態に陥るなど馬鹿げている。それを支持するアメリカ人は皆無だろう。考えてみてほしいが、アメリカはイギリスがアルゼンチンとフォークランド紛争(1982年)を起こした時でさえ中立を守った。尖閣で動くなどあり得ない。むしろこの問題があったので、共同コミュニケも見送られた。中国を刺激したくないからだ」
※週刊ポスト2010年11月19日号