日本は世界一の「美食の国」。その名声を確固たるものとしつつあるのが、『ミシュランガイド』の存在だ。だが、そんな『ミシュランガイド』の評価に真っ向から疑問を投げかけたのが、アメリカで最も権威ある新聞『ウォール・ストリート・ジャーナル』である。
同紙は10月25日付で「ミシュランガイドの日本最高評価を訝る声」なるタイトルの記事を掲載。
〈日本が星を多く獲得したことに、プライドの高い欧米の批評家や高級レストランのシェフからは不満の声が上がっている〉とし、〈ミシュランは、レストランを高く評価することでブランド志向で親仏的な日本に良い印象を与え、ガイドブックだけでなく、車のタイヤも買ってもらおうとしているとの見方もある〉と書いている。
同記事にもコメントを寄せた、元ミシュランの調査員パスカル・レミ氏がいう。「ミシュランは、海外進出にあわせ、レストラン評価基準を下げている。一番の狙いは、日本でのブランドイメージをあげることですよ」
しかし、当の料理人たちは、そんな騒動などどこ吹く風のようだ。 本誌が取材した店の中には「そもそもミシュランを認めていない」(兵庫県の2つ星店)、「騒がれるのは迷惑でしかない」(同3つ星店)とミシュラン掲載自体を歓迎しない声が予想以上に多かった。
一方、ミシュラン肯定派も決しておもねる様子はない。今回2つ星を獲得した芦屋市の日本料理店『たか木』の高木一雄店主がいう。
「ミシュランがこれだけ世間に認められているということは、それなりの確固たる判断基準があるという証拠でしょう。高い評価をして頂けるのはありがたいし、ぜひ協力したいと思っています。ただし、店の評価は最終的にはお客さんが決めること。星の数は問題ではありません。つまるところ、私どもはミシュランガイドに載るために頑張っているわけではない。そこがフランス国内におけるミシュランの意味とは違うところでしょう」
ミシュラン側は、「ガイドの評価は全世界で基準を統一している」(日本ミシュランタイヤ広報部)と説明する。ともあれ、掲載されるほどの名店には「ブレない軸」があるようだ。
※週刊ポスト2010年11月19日号