日本の本土最東端の地として知られる、北海道根室にある納沙布岬。最も朝日に近い場所として、多くの観光客が訪れている。
納沙布岬の本土最東端碑の前で記念撮影をする親子。そのすぐ向こう側に見えるのが、貝殻島だ。実質、ロシアに支配されているこの島は、近くて遠い「外国」なのだ。
ロシアのメドベージェフ大統領が旧ソビエト時代を含め初めて、国家元首として国後島を訪問した。大統領は、3年前に完成した地熱発電所など政府主導で整備が進むインフラ施設を中心に視察。今後も新たな地熱発電所や海の駅の建設が予定され、色丹島には近く幼稚園が完成する見込みだ。
さらに同国のラブロフ外相は2日、大統領が新たに歯舞群島と色丹島への訪問を計画していることを明かした。両島訪問が実現すれば、平和条約締結後の歯舞・色丹2島の引き渡しを記した1956年の「日ソ共同宣言」を踏み越え、日ロ領土交渉を根底から揺るがす懸念もある。
対して日本政府は、3日に河野雅治駐ロシア大使を緊急帰国させ、日本政府の中止要請を無視して国後島を訪問した経緯などを報告させただけ。あまりに弱腰でもはや「外交」の体をなしていない。
歯舞群島の一つ、納沙布岬の7キロ先にある水晶島の写真をよく見てほしい。近年建設されたロシア正教の小礼拝所が、岬の正面に建てられているのがわかる(写真左下)。
「自国領土であると誇示し、日本の返還運動を牽制する狙い」なのは間違いない。
中国との尖閣問題から間髪入れずに起こったこの電撃訪問。日本はどんどん国益を失う一方だ。
【写真解説】
右側には納沙布岬から3.7キロの距離に位置する貝殻島。高潮時には水没するが、上には1937年に日本が建設した灯台がそびえ立つ。しかし、2006年にはこの島周辺で日本のカニかご漁船がロシア国境警備局の警備艇によって追跡、拿捕された。
左には、水晶島に2005年に建設されたロシア正教会の建物が見える。周辺ではコンブがよく獲れ、今日も日本の漁船が行き交っている。