羽田空港の新国際線ターミナルが先月開業し、32年ぶりに国際定期旅客便が再開した。今後、就航先は、来年2月までにニューヨークやパリ、バンコク、シンガポールなど17都市に拡大する。羽田がハブ空港化に名乗りを上げたわけだが、実は日本の「ハブ」に最適な空港は別にある、と大前研一氏が指摘する。
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おそらく国土交通省の役人は、今もハブ空港の意味を理解していないだろう。日本はアジアと北米を結ぶ(最短距離に当たる)大圏航路上にほぼ位置するため、航空会社は日本を経由地にすることで飛行距離と時間を大幅に節約することができる。
アメリカに最も近い日本で乗り換えれば、東南アジアや中国へも直行便に近いルートで到達できるからだ。これが香港や仁川だと、日本や東南アジアへの移動に多くの飛行ロスが生じる。中近東のドバイ空港がハブ空港として大変な活況を呈しているのも、ヨーロッパとアジアの中間にあってロスが少なく、ドバイを経由して多くの都市に容易に乗り継げるからである。
また、ハブ空港は必ずしも大都市にある必要はない(アメリカのデンバーやソルトレイクシティが好例)。地政上のアドバンテージがより重要で、日本においては、大圏航路上にあり24時間運用も可能な新千歳空港が理想的だ。
北米から飛んでくる旅行者を一度新千歳に集め、日本の全国各地や他のアジア都市に散らす。逆にアジアから北米へ行く際は新千歳へ…これを実現していれば、新千歳空港は間違いなくアジア最大の国際ハブ空港となっていただろう。
現在、イギリスでは北西部・スコットランドのグラスゴー(グレートブリテン島で最も北米に近い都市)のハブ空港化を推し進めているが、これも同じ理屈である。新千歳と比べると羽田は“セカンドベスト”だが、先行するアジアのハブ空港と比べた場合、地理的優位性は揺るがない。
※週刊ポスト2010年11月19 日号