中国で大学生といえば、エリートのはずなのだが、そのエリートたちが日産やトヨタの車を破壊し、狂ったように「反日」を叫ぶ。その背景には、中国で拡大する「貧富の格差問題」がある。貧困層の学生の実態をジャーナリストの吉村麻奈氏が説明する。
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中国の新学期は秋から始まるが、浙江省杭州市にある浙江大学に進学した知人の長女、小華(18)の表情は入学早々から暗かった。中国でも有数の富裕層の多い都市・杭州の名門大学のキャンパスには、BMWで通学する学生、5000元(約6万1000円)近くする本物のiPhoneを持ち歩く学生、ファッションモデルのようにおしゃれな学生たちが大勢いる。
「なのに私は、授業に必要なパソコンを買うお金も持っていない」。小華は1年浪人すれば北京大学や清華大学も無理ではないと言われたほど成績優秀者だ。しかし、浪人して家計を圧迫するよりは今年入学確実の学校を選んだ。北京戸籍で決して貧困なわけではない彼女だが、せめて生活費くらいは自分で稼がなければ、とバイトに明け暮れる。
「自分ですら、こんなにコンプレックスが刺激されるなら、農村の貧困家庭出身だったら、もっとつらいと思う。だから、私は貧困学生が犯罪や暴力行為に走る気持ちがわからないでもないわ」と打ち明けた。
小華が訴えるように、この数年の間、学内貧富の差が中国の大きな社会問題となっており、学内格差や就職難など学生を取り巻く問題をテーマにした連続テレビドラマ『卒業時刻』なども話題となった。貧困学生の問題が毎日のように新聞に散見される。
※SAPIO 2010年11月24日号