横浜でのAPEC首脳会議がまもなく開幕するが、懸念されていた胡錦濤・中国国家主席の来日が決定し、ホッとするムードも漂っている。だが、実は中国こそAPECを欠席した場合に外国ダメージが大きいと指摘するのはジャーナリストの武冨薫氏だ。
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「そもそも尖閣問題でとった中国の姿勢は国際的に厳しい視線で見られている。これでAPECを欠席すれば外交的にダメージが大きいのは中国の方」(外務省幹部)であり、中国が海保のビデオ公開を止めたがっているのも、裏を返せば公開で国際社会から批判を浴びるのを恐れているからに他ならない。国の手持ちは“切れないカード”だ。むしろ外交カードは日本の方が多く持っているのである。
それなのに、菅政権が国際情勢を読み切れずに中国に一貫性のない対応を取ったことで、ロシアまで日本の足下を見透かしてメドべージェフ大統領が北方領土の国後島訪問に踏み切った。
メドべージェフ大統領の北方領土訪問は「9月末に訪中した際、胡錦濤と領土問題での共闘を確認した」(民主党国際局幹部)からだと見られている。味を占めたメドべージェフ大統領は国後訪問直後に歯舞、色丹両島の視察までブチ上げた。国益がぶつかる外交の場で、ひとたび「日本は弱い」と思われたらどこまでも舐められる。菅政権の外交失態がこの国の将来に大きな禍根を残したのは間違いない。
※SAPIO 2010年11月24日号