日本はアメリカの圧力により膨大な米国債を買わされてきた。それは、アメリカに金を貸しているということだが、にもかかわらず日本は何も担保を取っていないとはおめでたい。元・日本長期信用銀行取締役で、現・社会貢献支援財団会長の日下公人氏は、そう指摘する。
そして、いずれアメリカも日本も国家財政は火の車になり、国有資産を処分することになるが、そのときになってはじめて貸した金が返ってこないことに気づくことになるという。ではどうするか。以下は日下氏の指摘である。
******************************
アメリカが日本に米国債を買えと圧力を掛けてきたのは竹下登政権の時だ。当時、私は米国債を買うのはいいが、担保を取るか、または日本国民に説明できるよう「冷戦勝利のための特別債権」とかの条件をつけるようアメリカに要求すべきだと主張した。
この意見が取り入れられなかったのは言うまでもない。かつて1ドル=240円だった為替レートは今や80円。資産価値は3分の1になった。本来、借金の担保とは「借り手にとって辛いものか、または貸し手が欲しいもの」である。では日本人が欲しいものとは何か…。
言い切ってしまえば、その当時は「石油と土地と女」だった。女性というのは冗談にしても、「アラスカのガス田を担保によこせ」とアメリカに言ってもおかしなことではない。むしろ、それが総理大臣の仕事というものだ。
他にも日本人が欲しいものはある。原爆である。「何をバカなことを言っているのか」と多くの人が思うかもしれない。だが、世の中が「赤字」だらけになって、これまで常識とされてきた価値観が否定されれば、原爆やガス田を借金の担保に要求することの正当性に気づくはずだ。
日本が金を貸しているのはアメリカだけではない。官民合わせれば500兆円もの金を世界中に貸している世界一の債権大国だ。でも、ほとんどの国から感謝されていない。そして、「借金はなるべく返さない」というのが国際慣例だから踏み倒される可能性が大だ。
一方、借金を踏み倒す国には軍隊を駐留させるのも国際常識である。日本は軍隊を出すこともなく、それを他の国々から見透かされている。
だからこそ、原爆は日本がバカにされないための力となりうる。「貸し金を踏み倒されたくなかったら原爆を持て」と言いたい。
私の主張を極論と思うのは古い常識にとらわれている人だ。若い人はそんな先輩がいずれ右往左往する時が来ることを知っておくべきである。赤字が日本中に蔓延して混乱がはじまった時は世直しのチャンスだ。
※週刊ポスト2010年11月19 日号