エコカー補助金の打ち切りで、ユーザー、ディーラー、メーカーが悲鳴を上げている。販売に急ブレーキがかかる中、補助金に代わる起死回生の方策が求められている。自身も車好きとして知られる経済アナリストの森永卓郎氏が車離れの背景を解説する。
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「エコカー補助金」の申請が9月7日で打ち切りとなった結果、国内での新車販売台数(軽自動車を除く)は、1968年の統計開始以来、10月としては過去最低を記録。42年ぶりに20万台を下回りました。この数値は1990年10月(50万4641台)のピークと比べて、6割以上も減少しており、極めて低い水準になっています。
補助金は、ある意味で“需要の先食い”をしたのだから、仕方がない面もあります。でも、この状況を放置していると、日本の自動車業界にダメージが及ぶだけではなく、この国の経済が立ち直れなくなるほどの悪影響を及ぼすことになりかねません。
“若者の車離れ”と言われて久しいですが、中古車なら10万~20万円で買えるものもある。それでも車に乗らないのは、高い維持費を払い続けることができないからです。つまり「買えない」のではなく、「持てない」のです。
自動車に関する税金は、なんと9種類もあります。車の取得段階で、消費税、自動車取得税。保有段階では、自動車重量税、自動車税(「軽」の場合は軽自動車税)。さらに走行段階では、ガソリン車に揮発油税と地方揮発油税(この2つはいわゆるガソリン税)、ディーゼル車なら軽油引取税、天然ガス車なら石油ガス税がかかる。
ほかにも、燃料価格に消費税がつきますし、自賠責保険や車検といった費用も、大きな負担としてのしかかります。これでは、中低所得者層にとっては、車を維持する余裕など、まったくありません。
若年層の車離れがこのまま進めば、この先30~40年後には自動車産業は衰退し、日本に根付いていたモータリゼーション文化は消え失せてしまうでしょう。
※SAPIO2010年11月24日号