ドラマ『獣医ドリトル』(TBS系、毎週日曜9時~)で小栗旬(27)が演じて話題の獣医師だが、彼らを悩ませる飼い主が増えているという。
「“お願いだから治してください!”といわれて治療をしても、その後、ペットを引き取りに来ないような飼い主が増えて困っています」(田園調布動物病院院長・田向健一さん)
学校で教師を非難する保護者をモンスターペアレントと呼ぶ。医師にあれこれ文句をいう患者がモンスターペイシェント。ペットをめぐる世界ではモンスターオーナーあるいはモンスター飼い主と呼ばれる人たちも存在する。
「ペットの診療をめぐるトラブルは3つあります。ここまでは求めていなかったのに、という“過剰診療”。それによって起こる“診療料金をめぐるトラブル”。そして“獣医療ミス”です。ここ数年、ペット飼育に対する意識の向上に伴い、こういったトラブルは顕在化してきたと思います」(日本獣医師会の専務理事・大森伸男さん)
そのきっかけになったのが 2002 年、東京で起こった『真依子ちゃん事件』と呼ばれるケースだ。会社員夫婦の愛犬・スピッツの真依子(9)が旅行先で糖尿病と診断され、東京に戻ってかかりつけの動物病院に入院した。
しかし、緊急治療が必要なことは明らかだったにもかかわらず、病院がインスリンの投与を怠ったため、真依子は死亡。飼い主は獣医師3人を相手に裁判を起こし勝訴。これ以降、毎年のようにペットの医療過誤をめぐる裁判が起こされている。
その背景にあるのは、ペットも人間と同じで、家族の一員、わが子同様という考え方だ。
「明らかな医療ミスがあり、ペットが死んでしまった場合、怒りの矛先が獣医師に向かうのは仕方がないと思う。けっしてモンスター飼い主ではないつもりですが、なってしまう可能性はある。私も裁判を考えるかもしれません。それほど私たちにとってはペットは大切な存在なのです」(50代主婦)
飼い主の考えの根底にあるのは、獣医師なんだから「必ず治してくれるはず」という思い込みだ。
※女性セブン2010年11月25日号