日本シリーズ第6戦、第7戦は歴史的な大熱戦となり、平均視聴率はそれぞれ18.9%、20.6%と、今シーズンのプロ野球中継最高の数字をたたき出した。テレビ朝日が中継した第3戦は平均6.8%、テレビ東京の第4戦は9.7%だから、フジは「一人勝ち」だったのである。こんな数字が出たのだからフジもスポンサーも大喜び……かと思いきや、23時頃になると、まったくCMが流れない異例の構成となった。
「日本シリーズは、試合終了後の監督インタビューまで放送しなくてはならない。このような完全放送が決まっているケースでは、試合時間を最大5時間と想定してスポンサー集めをする。ただ、その想定を大幅に超えたため、予定していたCMが尽きてしまったのでしょう」(放送関係者)
社内からは恨み節も。「契約上他社のCMを流せないのはわかるが、“自局の番宣くらいはしても良かったのでは”なんて声が出ています」(別のフジ関係者)
仮にCMを流していたとしたら、どれくらいの収入が得られたのだろうか。
「午後10時以降の深夜帯とはいえ、20%近い視聴率の全国での注目度を考慮すれば、30秒CMで1000万円が相場。2時間の放送延長分は合計2時間ほどですから、幻に終わったCM収入は5000万から1億円ほどになると考えられます」(広告代理店関係者)
当のフジテレビに問い合わせてみると、やはり悔しかったのだろうか、普段は優しい広報担当者がムッとした声でこう答えた。
「シリーズ中継でのCM総量はあらかじめ決まっており、予定のCMを消化しただけのこと。繰り下げとなった番組のスポンサーにもご理解いただいています」
でも、逃した魚は大きいのでは?
「損をしたわけではありませんッ」――この広告不況の折、お気持ちはお察しします。
※週刊ポスト2010年11月26日・12月3日号