日本への憎しみだけを教育されて育った世代。それがいま、中国で「反日」を叫ぶ若者たちだ。1990年代初頭、江沢民政権が始めた「反日教育」は思惑どおり、国民の隅々までに行き渡った。いまや「反日カード」は共産党政権維持のために欠かせないものとなった。評論家、石平氏が体験的反日キャンペーンを語る。
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反日教育をもって、江沢民は何をめざしていたのか。
ひとつは、国民に対して日本人への憎しみを植え付けること。そして、日本は軍国主義を復活させて中国を侵略する危険性があるから、共産党の指導の下で一致団結して日本の軍国主義の復活を阻止、日本からの再びの侵略に対抗しなければならない、という思想の刷り込みである。
江沢民の反日教育は、天安門事件によって、党と政府に向けられた国民の憎しみの感情をそらし、失墜した党の威信を取り戻すためだった。事件以来、江沢民が直面した大きな課題は、共産党の一党独裁の正当性をどう主張するかということだった。
日本はその課題を解決する格好の対象だったのである。歴史的にも憎しみを煽る物語を作りやすい。国家としても適度に大きく、距離的にも近いから国民も実感しやすい。何より、日本という国はいくら叩いてもニコニコするだけで、外交的にも反抗しない。
中国で国民を洗脳するのは簡単なことである。中国共産党には国内のメディアをすべて掌握する中央宣伝部がある。すべてのメディアが中央宣伝部の方針に従うのだ。
もちろん「反日キャンペーンをせよ」という方針を出すのではない。「軍国主義が行なった犯罪を強調し、国民の愛国主義を高めるように」との方針が伝達される。同時にやってはいけないことの指示も出される。この場合は日本を弁護する情報は一切出してはならないという指示である。
日本人の残虐性ばかりを見聞させられる国民が、日本人を憎むようになるのは当然といえば、当然だ。このような反日教育は90年代初期からいま現在まで続いており、「歴史問題」や「戦争犯罪」に対する宣伝・教育は何も変わっていない。
※SAPIO2010年11月24日号