いつものように幕が開き―。昭和歌謡史に燦然と輝く名曲『喝采』。ちあきなおみ(63)は、1972年、この曲を歌って第14回日本レコード大賞を受賞した。日本を代表する実力派歌手だったちあきだが、1992年に夫を亡くしたことをきっかけに音楽活動を休止。それ以来、表舞台から姿を消した。ちあきの消息がつかめない中、復活を待ち望むファンにとって気になる情報を入手した。彼女の「レコ大トロフィー」が、なぜか第三者の手元に流出していることが発覚したのである。
現在、ちあきのトロフィーは、都内に住む30代男性・A氏の手元にある。彼は、ちあきがかつて所属していた三芳プロ社長である故・吉田尚人氏の息子にあたるB氏から、“借金のカタ”として、レコ大のトロフィーや盾を受け取ったのだという。有名彫刻家の故・吉田芳夫が手がけたブロンズ像をあしらったトロフィーには、「ちあきなおみ殿」とプレートに刻印がなされている。レコ大は、当時すべての歌手にとって垂涎の的だった。ちあきにとっても最も輝かしい実績であるこの賞のトロフィーが、なぜ流出してしまったのか。“流出元”であるB氏に話を聞いた。
「もともと、あのトロフィーは実家にあったものです。私の父親が応接間に飾っていた、いわば遺品です。それを借金の担保としてA氏に渡しました。あの品物は親父の形見です。ちあきさんにも、私が子供の頃からよくかわいがってもらっていた。今となっては連絡も取れませんが、本当に優しい人でした。私としては何とか取り返したい。まずはお金を返さなければならないのですが……」(B氏)
自らの歌手人生を鮮やかに彩った栄光の品が、面識すらない他人に渡っている。その事実を、ちあきはどう思っているのか。本人に話を聞くべく試みたが、彼女にたどり着くことはできなかった。B氏の借金が返済される見込みはまだない。
※週刊ポスト2010年11月26日・12月3日号