菅民主党政権が、税制改革に向けて動き出した。だが、大前研一氏は、それ以前に日本の税制は矛盾だらけだと指摘する。
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今は政治力によって、税務署による課税所得の捕捉率に大きな「業種間格差」がある。いわゆる「トーゴーサンピン」問題だ。
捕捉率がサラリーマン(給与所得者)は10割、青色申告の自営業者は5割、農林水産業者は3割、政治家は1割と言われている。
開業医なども高い経費率が慣行的に認められてきた。源泉徴収されているサラリーマンは捕捉にほとんど漏れはないが、自営業者や農林水産業者は自己申告なので税務署が把握しづらく、政治家は課税対象とならない政治資金に政治活動と無関係な支出を計上するケースが多発している。
農林水産業者や自営業者が優遇されているのは、選挙になると彼らの組織票が強いからだ。農家が「パイナップル農園視察」という名目の経費にして家族でハワイ旅行をしたり、商店主が「北欧小売業視察」という名目の経費にしてデンマークに人魚姫像を見に行ったりするのは当たり前になっているが、こんなことが許されてはいけない。
そういう不公平を解消することで、日本は何でもかんでも経費にしようとするセコさがなくなり、もっとクリアで魅力のある国になるはずだ。
※SAPIO2010年11月24日号