急成長の陰で、様々な矛盾を内包する中国。特に、政権の存立基盤を覆すほど大きな問題に発展しかねないのが「民主化圧力」に加えて「格差問題」だ。かつて天安門事件のスクープ報道で脚光を浴びた国際教養大学教授のウィリー・ラム氏は、習近平氏はこの「2つの爆弾」を抱え込んでスタートする、と指摘する。
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民主化を要求しているのは主に知識人であり、都市部の住民と言ってもよいが、一方で、中国の全人口の6割を占める農村部住民と都市部の深刻な「格差」も、新政権を揺るがす大きな火種となりうる。
中国の都市部では昨年末時点で、1000万元(約1億2000万円)の資産を持つ富裕層が32万人おり、この1年足らずで資産10億元(約120億円)の大富豪が250人も誕生したほど、バブル経済が活況を呈している。
その反面、中国では1日1ドル以下で生活する貧困層は約1億人。その数は、近い将来2億人と倍増することが予想されるという。農民の子供の中には、衣服がなく、下半身に墨を塗って「ズボン」としてごまかしている者がいるほどの貧困ぶりだ。
しかし、地方の政府はそのような農民から道路税や農業用水税などの名目で何重にも税金をかけて、払えない場合は道路工事などの労働を科すなど、封建時代さながらの苛斂誅求が現在も横行している。
また都市部に働きに出る出稼ぎ労働者が悪徳建設業者から給料を払ってもらえないケースもままあり、怒った農民や労働者がストやデモをするなどの集団での暴動は、年間10万件以上に上るとされる。
(翻訳・構成/相馬勝)
※SAPIO2010年11月24日号