ゴルフの杉原輝雄プロ(73)は通算63勝(うち海外1勝、シニア6勝)を重ね、1989年にレギュラーツアーの永久シードを獲得した。その実績だけでなく、歯に衣着せぬ人柄から“ゴルフ界のドン”としてファンから親しまれてきた。1997年に12月に前立腺がんが発覚し、2008年4月にはリンパ節に転移。それでも杉原プロはプレーに影響が及ぶ手術を避けてきた。そして、再び病魔は襲いかかる。この8月、リンパから肺への転移が確認されたのだ。「後悔はしてへん、でも反省はせなあかんとは思うてます」。杉原プロが入院先の病室で、その胸中を明かした。
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ジャンボ尾崎プロがプロ野球選手からゴルファーに転身してきたのは1970年のことだった。当時のゴルフ界には抜きんでた“看板選手”が不在。荒削りながらも抜群の飛距離を誇るジャンボのプレーは、瞬く間にファンの心を掴んだ。
「ジャンボの登場は、ゴルフ界にとっては、いわば“黒船の襲来”。絶対に負けたらいかん、と彼を倒すためにトーナメント全体が底上げされたと思います。アマチュアの延長のような今のゴルフ界からは想像できないほど、皆、殺気立ってたよ。
彼の“パワー”は、僕の今まで培ってきた“経験”を凌駕した。ショックやったけど、どうすればジャンボに勝てるか必死で考えた。ボールを飛ばす新たなフォームも試みたし、正確なパットをより磨いた。
“マムシの杉原”はそうして、鍛えられていったんや。彼がいなかったら、こんなに現役も続かなかったかもしれん。そういう意味では本当に感謝しとるよ。最近は、太りすぎで目立った活躍ができてへんけど、ジャンボにはもう一度奮起してもらいたいな」
※週刊ポスト2010年11月26日・12月3日号