秋川雅史(43)が歌った『千の風になって』の訳詞・作曲をした作家で、シンガー・ソングライターの新井満さん(64)が、このほど『死の授業』(講談社)を出版。新井さんが、母校である新潟市立寄居中学校で2年生を前に教壇に立った模様が放映(NHK総合テレビ『課外授業 ようこそ先輩』)されたのは、2009年1月のこと。授業のテーマは「死」。
希望と生命力にあふれる中学生を前に、なぜ「死」なのか。
「いま、子供たちの死に対するイージが希薄になっています。死というものを、“ちょっと遠くまで旅に出る”ような軽い感覚で受け止めているんじゃないでしょうか」
そう話す新井さんは、子供たちに死の重さを実感してもらうための「死の授業」を行ったのだ。
「『千の風になって』の中で私は、“死んだら風に生まれ変わる”と歌っていますから、『死の授業』の死生観とかなり違うんじゃないか、ととまどうかたもいらっしゃるでしょうね(笑い)。“一巻の終わり”から“再生”まで、“死”にはさまざまな定義がありますが、若い諸君には“死の重さ”を実感してほしい。けっして軽く考えないでいただきたい」
続けて新井さんは、ちょっと冗談めかしていった。
「ただ、もしあの歌にささやかな功績があるとすれば、それまでは禁句だった“お墓”という言葉を初めて持ち込んだことでしょうね」
墓、死。新井さんは、一般的に“縁起でもない”ことばかりを取り上げながら、やさしい気持ちを伝えて、死を考えるきっかけを与えてくれた。
※女性セブン2010年12月9日号