父方の祖父母は白洲次郎・正子。母方の祖父に小林秀雄を持つ白洲信哉氏。現在は、日本文化の普及につとめる白洲氏が、日本の旬の香りを楽しみ、秋の名残を惜しむ逸品として、「松茸と鱧(はも)」を紹介する。
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僕は松茸だけを食するなら、香りがひきたつ酒蒸しが一番だと思うが、「松茸と鱧」はなんといっても鍋が最上であろう。
松茸の香りを出汁にうつし、鱧をしゃぶしゃぶし、生煮えのうちに取り出して、梅肉か大根おろしと食べる。好みで柚子胡椒を加えてもいい。鱧はおとしと、わざわざ氷水で冷やして食べる人の気がしれない。俗に「香り松茸、味しめじ」といい、万葉集にも「芳かおりを詠める」とあり、僕もその通りだと思う。
茸は全般に味は淡白だが、個々の味が違うので、雑茸を松茸の代用としても一向に差し支えない。いや、一層秋の風情が漂うと言えるだろう。