自由になるカネが減るのだから男女の交際も下火になると思いがちだが、そんなことはない。「不況下では不倫が増える」10年以上、男女の不倫をリサーチしてきた亀山早苗氏はそんな“法則”を導き出している。夫たちが知らない、人妻の実態をレポートする。
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「いやあ、うちは夫婦仲が悪いわけじゃないし。それにうちのに限って不倫なんて」
そう一笑に付す男性たちのなんと多いことか。しかし、そうやって笑う男性の妻が隠れた恋をしている事例を私は知っている。「夫を嫌いになって」恋愛に走る妻は、比較的少数派なのだ。むしろ、女性たちの心の奥底には、「自分が外で恋をしていることが夫にばれたら怖い。だけど気づいてくれないことにも腹が立つ」という複雑な心理がある。
P&Gが2009年6月に行なった意識調査(25~49歳の主婦400名が回答)では、「最近夫以外の男性にときめいた」と回答した主婦が74%を占めた。にもかかわらず、「自分にときめいて欲しい」男性を尋ねると「夫」が72%と圧倒的に多い。彼女たちの“複雑な心境”が垣間見えはしないか。
とはいえ結婚生活も10年、15年とたってくると、お互いに「相手を異性として見られない」という状態に陥る。
ふと気づくと40代。結婚以来、夫や子どものために生きてきたが、子どもたちはそろそろ自分の世界を持ち始め、以前ほど手がかからない。夫は仕事で疲れ切っている。鏡を見れば、白髪やしみ、しわが目立つ……。私の人生、なんだったんだろう。女として幸せだったのだろうか。そこから女性たちの逡巡が始まる。
不倫の恋をしている女性たちで、圧倒的に多いのは30代後半から50代にかけて。子どもの手が離れ、自分の女性としての外見に不安がよぎったころから「恋」という魔物が忍び込む。しかも、40代半ば以降はバブルを知っている世代。若いころ、多少なりともチヤホヤされた経験をもつ。さらに、「いくつになっても、キレイでいなければ女じゃない」と煽られてきた。
女は、妻、母としてだけでなく、「女として」生きていかなければならないそんな強迫観念に近い気持ちが、女性たちの間には渦巻いている。
※SAPIO2010年12月15日号