近ごろ「就活」ならぬ「終活」というものが話題だ。日本初の葬儀相談員である市川愛さんはこう説明する。
「『終活』とは、人生の最期を迎える準備をすることです。私のもとにも50代後半から80代まで、葬儀、お墓などについての終活相談が寄せられています」
そんな中、葬儀に対する考え方も変わってきた。日本の葬式費用の平均は231万円といわれる。アメリカ44万円、イギリス12万円、韓国37万円などと比べて、ダントツの世界一だ。ところが、最近では、通夜や葬儀は行わず、火葬のみの「直葬」、親族のみで行う「家族葬」、海や山などに散骨する「自然葬」などバリエーション豊富になった。葬式を一切しないという「葬式無用論」も登場するほどだ。
「最近のお葬式は小規模化と簡素化が目立ちます。以前は密葬をしてもその後に本葬を行うものだったそうですが、現在は完全に家族や身内だけの葬儀が多い。個人の趣味や志向が強く反映されるようになりました。昔は、例えば『松竹梅』などから葬儀のコースを選んでいましたが、現在は選択肢も豊富になりました」(前出・市川さん)
終活の一環として、生前に自分の葬儀形式を決める人も増えている。市川さんは、死を正面から描き、2009年にアカデミー外国語映画賞を受賞した映画『おくりびと』の影響が強いという。
「あの映画の以前と以後で、葬儀に対する皆さんの気持ちが大きく変わりました。それ以前は、生きているときにお葬式の話を出すと、『縁起でもない!』という反応で、生前に葬式のことを考えるのは、タブーとされた。いまはそんな罪悪感が薄れ、積極的な終活が広まっています」
※女性セブン2010年12月9日号